深海の環境問題に人間が与えている影響【ごみ・プラスチック】

深海の環境問題に人間が与えている影響【ごみ・プラスチック】
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深海とは

水深200m以深の海のこと。人の目ではほとんど真っ暗闇。さらに水深約1000mを超えると太陽光は一切届かなくなる。海洋全体の約95%が深海であるとされている。

深海には、不思議な生態をもつ深海生物がたくさん生きています。深海や深海生物に関する研究は近年どんどん進んでおり、多くの謎が解明されているホットな世界です。しかし、深海は宇宙よりも行くのが難しいとされる場所。それもあってか、私たちにとってはあまりイメージが浮かばない世界ですよね。

では、私たち人間が生活している陸上と、深海生物たちが生息している深海にはどのような関係があるのでしょうか。遠く離れているからといって、その関係は無視できるものなのでしょうか。

今回は「深海の環境問題人間が与えている影響」というテーマでお話していきます。特に今回のメインテーマは「ごみ、プラスチック」です。

あくと2
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人間、人間以外の動物、自然。これらの生命はこれからもずっと共存していかなくてはなりません。今回は大学院で環境に優しいプラスチック合成の研究をしている私が、深海のごみ問題について解説します!

深海の環境問題に人間が与えている影響

人間の捨てたごみが海の生物を傷付ける

ごみを誤って飲み込んでしまったり、ごみが体に突き刺さったりして苦しんでいる魚や鳥の映像。皆さんも一度はニュースなどで見たことがあるのではないでしょうか。実は2015年に発表された論文1によると、海鳥の90%はプラスチックごみを誤飲したことがあるという研究結果が得られています。さらに今後の予想では、2050年までに99%の海鳥がプラスチックごみを誤飲すると述べられているのです。

we predict that plastic will be found in the digestive tracts of 99% of all seabird species by 2050 and that 95% of the individuals within these species will have ingested plastic by the same year.

1. Wilcox, C.; Sebille, E. V.; Hardestry, B. D. PNAS, 2015, 112, 11899.

プラスチックごみは天災ではありません。完全に人間が生み出し、廃棄したものです。不適切な廃棄法によって流出したプラスチックごみがこれほどまでに大きな影響を自然環境に与えています。私たち人間は、今一度この事実を自覚しなくてはならないと思います

人間の捨てたごみが深海に積もっているという事実

人間が捨てたプラスチックごみは、浅い海のみならず、深海にも影響を与えていることが分かっています。

国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)は、深海デブリデータベースにおいて、深海で見つかったごみの画像・動画を無料公開しています。実はこのデータベースによると、1983年には深海に落ちているポリ袋が確認されているのです。深海のごみ問題は今に始まったことではないのですね。

1983年に駿河湾の海底で発見されたポリ袋。引用: 深海デブリデータベースより

2018年には、過去30年間にわたる深海のごみの情報をまとめた論文2が、JAMSTECと国連環境計画(UNEP)から発表されました。

本論文によると、水深2000m以深の海底で発見されたごみの内、最も多かったのがプラスチックごみ(33%)でした。しかも、このプラスチックごみの内、大部分の89%は私たちが一般的に利用するビニール袋等のプラスチックごみ。私たち一人ひとりが気を付けるだけで、かなりのごみを削減できることが分かります。

A total of 3425 anthropogenic debris items were detected in 5010dive records, among which plastic was the most frequently observed category, accounting for 33% of all debris items, followed by metal(26%), rubber (1.8%), fishing gear (1.7%), glass (1.4%), cloth/paper/lumber (1.3%), and and other anthropogenic items (35%). Of the plastic items, 89% were single-use products.

2. Chiba, S.; Saito, H.; Fletcher, R.; Yogi, T.; Kayo, M.; Miyagi, S.; Ogido, M.; Fujikura, K. Marine Policy, 2018, 96, 204.

また、深度約1万メートルである世界最深のマリアナ海溝でも、ポリ袋が見つかっていると記述されています。つまり私たち人間が不適切に廃棄したごみは、海全体に広がっている可能性があるということです。

ごみを食べてしまう深海生物

深海生物の調査によると、一部の深海生物( 水深900~1400mに生息するミズウオや、水深200~600mに生息するアオメエソなど)の胃袋からプラスチックごみが発見されています。浅瀬の生き物だけでなく、深海生物もごみの誤飲に苦しんでいるのです。こういった研究は、私たちが気を付けなければならないことを教えてくれる素晴らしいものですね。

ごみと有害物質

深海のごみが深海生物に与える影響は誤飲や突き刺さりのみではありません。大きな例の1つが、有害物質です。プラスチックごみは、海中を漂う間に有害物質であるポリ塩化ビフェニル(PCB)などを吸着すると考えられます。

PCBとは

人工的に作られた化学物質。電気機器や熱交換器などに用いられていたが、その高い毒性から1972年に製造が中止された。しかし現在も海中を漂い続けている。分解されにくく生物に蓄積しやすいため、今後も無視できない有害物質である。

PCBは高濃度になると毒性が非常に高くなります。PCBを吸着してしまったプラスチックごみを、深海生物が体内に取り込んでしまうことは非常に危険です。

実際にごみの汚染が進行している海において、生物から高濃度のPCBが確認されています。通常PCBは、生物1グラムに対して1ナノグラム(1億分の1グラム)と言われていますが、汚染地域では100~1900ナノグラム(約100万分の1~5万分の1グラム)も観測されています。

深海のごみ問題対策

海にごみを流出しない

国が、そして私たち個人が適切なごみの廃棄を行うことで深海のごみ問題の拡大を防ぐことが可能です。2017年に開催された国連海洋会議においても、プラスチック汚染の軽減が2030年までの目標として掲げられています。実際に多くのヨーロッパ、アジア諸国がこの目標のために注力しています。私たち日本人も、より強い意識を持って自然を守らなければなりません。

環境に優しいプラスチックの研究

近年、環境に優しいプラスチックの合成に関する研究が進んでいます。環境に優しいプラスチックとは、微生物によって環境に無害なもの(水や二酸化炭素)に分解されるプラスチックのことです。現在使用されているプラスチックがこのような環境調和型プラスチックに置き換われば、環境への負荷が軽減されると考えられます。今後の研究に期待しましょう!

環境に優しいプラスチックに関する詳しい記事は、後日公開する予定です。お楽しみに。

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まとめ

今回は「深海の環境問題人間が与えている影響」というテーマでお話しました。

大事なことなので改めて述べますが、プラスチックごみは天災でありません。私たち人間が生み出した問題なのです。ちょっとした惰性で不適切なごみの処理を行ってきた積み重ねが、自然環境に影響を及ぼしています。

 

あくと2
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この環境問題を解決するために、多くの研究者が奮励しています。私たちも一人ひとりが気を付けることで、一緒に環境問題を解決していきましょう。

 

それではまた次の記事で!

参考文献
(1)Wilcox, C.; Sebille, E. V.; Hardestry, B. D. PNAS, 2015, 112, 11899.
(2)Chiba, S.; Saito, H.; Fletcher, R.; Yogi, T.; Kayo, M.; Miyagi, S.; Ogido, M.; Fujikura, K. Marine Policy, 2018, 96, 204.

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