深海生物が巨大なのはなぜ?理由を解説【深海巨大症】

深海生物が巨大なのはなぜ?理由を解説【深海巨大症】
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深海の生物たちって、なんであんなに大きいの?

ダイオウイカ、オオグソクムシ、タカアシガニ……。挙げるとキリがありませんが、深海で生きる生物は浅瀬で生きる生物に比べて大きな、時に巨大な体を持っています。

浅いところに生息する近縁な種よりも深海生物が巨大化することを、「深海巨大症」と言います。その要因は全て明らかになっているわけではありません。今回は深海巨大症の要因として考えられている説を紹介していきます。

深海生物が巨大なのはなぜ?「深海巨大症」とそのメカニズムを解説

大きい水圧に耐えられるから

海に潜れば潜るほど、周囲から水圧がかかります。高い山に登るとお菓子の袋がパンパンに膨らんでいるのを目にしたことがあるかもしれませんが、深海はその逆でグシャッと押し潰す力がはたらきます。その力は、なんと水深500 mで金属バットがペシャンコに潰れてしまうほどです。この力に対抗するために深海生物は巨大化したのではないか、と言われています。

ちなみに、水圧に耐えるための仕組みは他にもあります。例えば、ダイオウグソクムシは硬い甲羅で全身を覆うことで水圧から体を守っています。また、アンコウは長い進化の中で気圧を調節するための「浮袋」を退化させました。これによって、体内の環境を海水に近づけ、高水圧に適応しています。

ちなみに人間が深海に潜るとどうなるか、気になる方はこちらの記事をご参考ください。

体に熱を蓄えられるから

深海の温度

深海は太陽の光が届かないため、かなり寒いです。深海の温度(水温)は水深約1000 m以深で2-4℃となります。

深海生物の一部はこの冷たい深海で生活するために巨大化したのではないか、と考えられています。この仮説は、以下で説明する「ベルクマンの法則」に基づいています。

ベルクマンの法則

1847年、ドイツの生物学者クリスティアン・ベルクマンは興味深い理論を発表しました。それは、「恒温動物においては、同じ種でも寒冷な地域に生息するものほど体重が大きく、近縁な種間では大型の種ほど寒冷な地域に生息する」というものです。少し難しいので、クマを例に考えてみましょう。

まずは熱帯に生息する、マレーグマ。体長は約140 cmとクマの中では最小です。次に、日本を含む温帯に生息するツキノワグマ。体長は130~200 cmでマレーグマよりも少し大きめです。さらに極寒の地、北極に生息するホッキョクグマ。体長は200~300 cmで地上最大の肉食動物と言われています。もうお分かりかと思いますが、寒い地域に生息するクマほど体長が大きい傾向がありますね

ベルクマンの法則は基本的に恒温動物に関するものです。しかし、深海に生息する甲殻類は変温動物ですが、ベルクマンの法則が当てはまると提唱している論文もあります。

 

熱生産量と放熱量

ベルクマンの法則以外にも、体が大きいと体に熱を蓄えられるという考え方があります。この考え方は体が生み出す熱(熱生産量)と体から出ていく熱(放熱量)に関係すると考えられています。少し難しいですが、概要だけ解説していきます。

より詳細なことを知りたい人はWikipedia「ベルクマンの法則」の「理論」の項目をご覧ください。

そもそも、なぜ熱が必要なのか

まず、私たち人間について考えてみましょう。人間は「恒温動物」、つまり体温を一定に保っています。健康な人の体温は約36-37℃ですが、なぜ約36-37℃で保たれているのか、実はハッキリと理由が分かっているわけではありません。しかし、その理由の一つは、効率的に化学反応を起こすためだと考えられます。私たちの体は細胞一つ一つの集合体ですが、その細胞の内外には「酵素」というものがあり、生体の化学反応を手助けしています。この「酵素」が活発にはたらき、効率的に生体の化学反応を進められる温度が約36-37℃なのです。

話を深海生物に戻します。深海生物の大半は「変温動物」、つまり環境に応じて体温も変化します。では体に熱が必要ないかというと、そんなことはありません。変温動物も恒温動物と同じように細胞の集合体なわけですから、細胞の内外では化学反応が行われ、生命活動を維持しています。そのため、冷たい深海で生き延びるためには熱が必要なのです。

代謝エネルギーを抑えられるから

『ゾウの時間 ネズミの時間』

東工大名誉教授の本川達雄氏の著書、『ゾウの時間 ネズミの時間』は耳にしたことがある人も多いと思います。サイエンス関連の書籍では珍しくベストセラーとなった名著です。とても面白いので、まだ読んだことがない人はぜひ手に取ってみて下さい。

この本は、生物の大きさの違いが及ぼす影響について解説するとともに、体の大きさの法則についても触れています。ベルクマンの法則もその一つですが、ここでは「クライバーの法則」について説明しましょう。

クライバーの法則

これは1932年にマックス・クライバーが発表した「生物の個体呼吸量(=代謝)は、体重の3/4乗に比例する」という法則です。分かりやすく説明すると、「体の大きな生物ほど(相対的に)少ないエネルギーで生きていける」ということになります。

水温の低い深海で、しかも限られた獲物しかいない環境で生きていくためには、なるべく消費するエネルギーを節約したいところです。つまり、深海生物は体を大きくすることで「省エネ」しているのではないかと考えられています。

深海生物が巨大なのはなぜ?未知な部分もまだ残されている

ここまで深海生物が巨大である理由として考えられている説を紹介してきましたが、まだ解明されていないことも多いです。

例えばチューブワームという生物を見てみましょう。熱水噴出孔にはRiftia pachyptila、冷水湧出帯にはLamellibrachia luymesiというチューブワームが生息しています。もし生息地の温度のみが大きさに影響しているとすると、後者の方が大きくなるはずです。しかし、実際にはどちらも約2.7 mと同程度の長さです。

このように、深海生物の巨大化には未知な部分が残されています。今後の研究に期待しましょう。

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まとめ

「深海生物は巨大で恐ろしい」と感じていた方も、ただ単に巨大なわけではなく、その中にしたたかな生存戦略が隠されていることが分かっていただけたでしょうか。ミステリアスな深海生物ですが、知れば知るほど面白くなってきますね!

それではまた、次の記事で!

参考文献

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